目次
鋳造アルミ密閉筐体で最も分かりにくい不具合の一つは、素材では問題がなく、場合によっては素材段階の漏れ試験にも合格したのに、CNC加工後に漏れ始める現象です。これは単純な鋳造不良でも単純な加工不良でもなく、内部欠陥、加工代、最終肉厚、シール界面、検査順序が重なって発生します。
なぜ「加工後漏れ」が密閉鋳物で起きるのか
アルミ鋳物内部には各種不連続部が存在する可能性があります。ASTM E155はアルミ・マグネシウム合金鋳物の放射線参考画像、ASTM E505はアルミ・マグネシウムダイカスト向け参考画像で、PorosityやShrinkageなどを代表的な欠陥カテゴリとして扱っています。
内部欠陥が存在しても、素材段階で表面へ連通していなければ漏れないことがあります。
代表的な流れは:
内部ポロシティ存在 → 両側に健全金属が残る → 素材は漏れない → CNCで材料除去 → 欠陥が開口 → 貫通経路形成 → Final Leak NG
です。
ガスポロシティ、引け巣、亀裂を分ける
| 欠陥 | 特徴 | 密閉部品へのリスク |
|---|---|---|
| Gas Porosity | 比較的丸い気孔 | 加工後に漏れ経路化 |
| Shrinkage Porosity | 凝固補給不足による不規則空隙 | 厚肉・熱節で連続しやすい |
| Crack | 連続した亀裂 | 直接貫通しやすい |
最終的にはすべてLeak NGとして現れる可能性がありますが、鋳造側の根本原因は異なります。
失敗報告では、欠陥種類、位置、最終加工面までの距離、貫通性、厚肉/熱節との関係、どの加工後に初めて漏れたかを記録することが重要です。
素材表面から欠陥が見えない理由
密閉性で重要なのは欠陥の有無ではなく連通性です。
5 mmの壁の内部に孔があっても、内外に健全な金属が残っていれば漏れない場合があります。
CNCで表面から材料を除去すると孔が開口し、内部ネットワークが内腔へつながっていれば漏れ経路になります。
したがって重要なのは:
欠陥がどこにあり、最終加工面までどれだけ材料が残っており、連続経路になり得るか
です。
加工代は大きければ安全ではない
加工代が多すぎると:
- 除去量増加;
- 加工時間増加;
- 残留応力再配分;
- 内部孔隙を開口する可能性増加;
- 最終肉厚低下;
- 薄肉変形増加;
につながります。
少なすぎても素材ばらつきを吸収できません。
正しい設定は:
鋳造能力 → 素材公差 → 欠陥分布 → 加工代 → 最終肉厚 → CTQ
で決めます。
フランジとOリング周辺が高リスクな理由
密閉筐体のフランジでは:
- 大面積仕上げ;
- Oリング溝;
- ボルト穴;
- 継手/プラグ穴;
- 最終基準;
など加工量が集中します。
ここは材料除去量が大きく、同時にシール性能が最も敏感な区域です。
フランジLeak NGでは、孔隙だけでなく:
平面度 + Oリング溝 + 表面損傷 + 貫通欠陥
を同時に確認します。
X線で何が分かるか
ASTM E155/E505は鋳造不連続部の種類と程度を判定・共有するための参考画像を提供します。
X線は内部体積欠陥、ガスポロシティ、引け巣などのスクリーニングに有効です。
ただし二次元投影では、欠陥の深さ位置が必ずしも明確ではありません。
Industrial CTが加工面との相関に向く理由
産業用CTでは:
- 欠陥の三次元位置;
- 寸法・形状;
- 欠陥間の接近/連通;
- 最終加工面までの距離;
を評価できます。
分析は:
CT欠陥データ → 最終3D形状重ね合わせ → 加工除去領域 → 開口リスク判定
という考え方が可能です。
新規金型、高価値密閉筐体、同一場所での漏れ再発、加工代最適化に有効です。
ただしCTで欠陥が見えることと、実際に漏れることは別問題なので、最終Leak Testは必要です。
Leak Testが最後に確認すること
X線/CTは内部構造を見ます。
Leak Testは:
高圧側と低圧側をつなぐ実際の貫通経路があるか
を確認します。
| 方法 | 主な質問 |
|---|---|
| X-ray | 内部欠陥があるか |
| CT | 欠陥はどこにあり加工面までどれくらいか |
| Leak Test | 本当に貫通して漏れるか |
役割は補完関係です。
最終Leak Testを重要加工後に置く理由
素材でLeak PASSしても、その後:
フランジ加工 → Oリング溝 → 継手穴 → 薄肉加工
によって圧力境界が変わります。
工程設計では:
圧力境界を最後に変える加工は何か?
を特定し、その後にFinal Leak Gateを置きます。
後工程でOリング、継手、プラグを組み付ける場合はAssembly Leak Testが必要になることもあります。
Leak、Proof Pressure、Burstを混同しない
| 試験 | 目的 | 破壊性 |
|---|---|---|
| Leak Test | 漏れ経路検出 | 非破壊 |
| Proof Pressure | 指定圧力で構造・密封確認 | 通常非破壊 |
| Burst Test | 極限破壊圧確認 | 破壊 |
仕様では試験媒体、圧力、保持時間、許容漏れ率を明確にします。
試験媒体で結果が変わる理由
代表媒体は乾燥空気、窒素、ヘリウム、水、顧客指定液体などです。
媒体により物性と検出方法が異なるため:
水で目視漏れがなくても、より厳しいガスLeak Rateを自動的に満たすとは限りません。
RFQには:
Test Medium + Pressure + Time + Allowable Leak Rate + Method
が必要です。
加工損傷でもLeak NGは発生する
| 加工問題 | 漏れリスク |
|---|---|
| シール面傷/工具痕 | Oリングバイパス |
| Oリング溝不良 | 圧縮不足 |
| ねじ穴過深 | 内腔へ貫通 |
| 深穴曲がり | 局部肉厚不足 |
| 過度なバリ取り | シールエッジ損傷 |
| 表面処理寸法変化 | シール嵌合変化 |
| 治具傷 | 局部シール不良 |
したがってLeak NGは:
Casting-induced leak
と
Machining/assembly-induced leak
を分けて解析します。
鋳造か加工かをどう判断するか
| 現象 | 疑う方向 |
|---|---|
| 同じ熱節位置で繰返し漏れ | 鋳造引け/孔隙 |
| 工具交換後にLeak増加 | 加工要因 |
| Oリング周辺 | シール面/溝/組立 |
| 深穴付近 | 穴位置、肉厚、孔隙 |
| 素材ロット差が大きい | 鋳造ロット |
| 表面処理後のみLeak | 膜/接口/組立 |
8DではLeak位置と:
鋳造位置 + CNC工程 + 工具 + 素材ロット
を関連付けます。
含浸処理は使えるか
真空含浸などで鋳造ポロシティを密封する技術は存在します。
ただし標準的な逃げ道として使うべきではありません。
顧客許可、欠陥種類、温度/媒体適合性、後工程表面処理、含浸タイミング、トレーサビリティを確認します。
亀裂、重大な引け巣、肉厚不足は含浸で構造品質に置き換えることはできません。
Defect Mapを作る
安定量産では履歴データを欠陥マップ化できます。
| データ | 目的 |
|---|---|
| X-ray/CT位置 | 高リスク区域 |
| Leak位置 | 貫通高発区域 |
| CNC加工深さ | 開口との相関 |
| 最終肉厚 | 薄弱区域 |
| 金型キャビティ番号 | キャビティ差 |
| 鋳造ロット | 工程ドリフト |
| Leak Rate | 深刻度 |
| 廃棄/手直し | 品質コスト |
数か月後に価値があるのは:
どこが漏れやすく、どのキャビティ、加工深さ、工程と関連するか
を答えられることです。
試作から量産までのLeak Gate
| 段階 | 重点 |
|---|---|
| Prototype | 薄肉・欠陥リスク区域特定 |
| DVT | X-ray/CTと加工面相関 |
| Pilot | Final Leak Testと不具合定位 |
| Mass Production | 100%または規定頻度Leak + SPC/追跡 |
すべての部品にX-ray/CTを行う必要はありません。
一般的にはNDTで工程能力と高リスク品を管理し、Final Leak Testで完成機能を確認します。
代表品質チェーン
鋳造工程設計
→ 材料/ロット確認
→ 素材寸法・外観
→ 必要X-ray/CT
→ 粗加工
→ 欠陥露出確認
→ 重要シール/構造加工
→ バリ取り・洗浄
→ フランジ/Oリング/接口CTQ
→ Final Leak Test
→ Proof Pressure(要求時)
→ 表面処理/組立
→ Assembly Leak Test(要求時)
→ データ追跡
各Gateは具体的リスクに対応させます。
失效—原因—対策
| 不具合 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| CNC後突然Leak | 内部孔隙開口 | Defect Map + 加工代最適化 |
| フランジLeak | 引け/平面度/Oリング | NDT + シールCTQ |
| 深穴周辺Leak | 穴曲がり/肉厚/孔隙 | 穴位置+肉厚管理 |
| ロットLeak増加 | 鋳造工程ドリフト | 素材SPC |
| 特定キャビティ高発 | 充填/凝固局部問題 | キャビティ追跡 |
| ランダムLeak | ガスポロシティ変動 | 溶湯/鋳造工程管理 |
| 処理後Leak | 接口/膜/組立 | 後工程再検査 |
| Tester不安定 | 治具/設備 | MSA/校正/保守 |
RFQ
| RFQ入力 | 重要性 |
|---|---|
| 鋳造方式 | 欠陥モード |
| 合金/熱処理 | 材料・変形 |
| 3D + 2D | 最終加工面 |
| 最終肉厚 | 構造・欠陥 |
| 加工代 | 欠陥開口 |
| 密封媒体 | Leak Test |
| 使用圧力 | 機能境界 |
| Leak Rate | 合否基準 |
| Test Medium | 検出感度 |
| Proof/Burst | 構造検証 |
| X-ray/CT | NDT Gate |
| 含浸可否 | 補修戦略 |
| Oリング/シール | シールCTQ |
| 表面処理 | 接口寸法 |
| 年間数量 | 検査自動化 |
| 追跡要求 | ロット/キャビティ/加工データ |
「漏れてはいけない」だけで試験媒体、圧力、許容Leak RateがないRFQは、製造・検査条件として不十分です。
まとめ
鋳造アルミ密閉筐体が「素材では漏れず、加工後に漏れる」本質は:
内部鋳造欠陥と最終加工境界が交差すること
です。
解決策は単純な「気孔ゼロ」要求ではありません。
欠陥種類 → 欠陥位置 → 加工代 → 最終肉厚 → シール界面 → Leak Gate
を一つの工程ロジックとして管理する必要があります。
成熟した量産ではX-ray/CT、CNC加工深さ、Leak位置、鋳造ロットを統合してDefect Mapを作り、最終検査で不良を拾うのではなく、設計・鋳造・加工段階で高リスク区域を減らしていきます。
FAQ
鋳造アルミ筐体が素材段階では漏れないのに、加工後に漏れるのはなぜですか?
鋳物内部には、表面へまだ連通していないガスポロシティ、引け巣、微小亀裂が存在することがあります。CNC加工で加工代を除去すると、それまで隔離されていた欠陥が開口し、内腔と外部をつなぐ連続経路になる可能性があります。そのため素材段階の漏れ試験だけでは最終気密を保証できません。
X線、産業用CT、漏れ試験の違いは何ですか?
X線は主に鋳物内部の体積欠陥とその程度を確認します。産業用CTでは欠陥の三次元位置、寸法、加工面との関係をさらに確認できます。漏れ試験は実際に貫通した漏れ経路が存在するかを確認します。役割が異なるため完全な代替関係ではありません。
加工代を大きくすれば鋳物漏れを防げますか?
必ずしもそうではありません。加工代が大きいほど除去量と残留応力の再配分が増え、内部のポロシティを開口させる可能性も高まります。加工代は鋳造能力、素材公差、欠陥分布、最終肉厚、CTQを合わせて設定する必要があります。
密閉鋳造アルミ部品の量産では、どの工程で漏れ試験を行うべきですか?
製品リスクに応じて、素材段階、重要粗加工後、最終加工後、組立後にGateを設定できます。高リスク密閉部品では、少なくともシール面、Oリング溝、接口など主要加工が完成した後に最終漏れ試験を行い、追加試験は顧客仕様とリスクに基づいて決めます。
